台湾の三大節句の最後の一つは中秋節。中秋の名月という言葉は聞いた事がある人も多いはず。今日は台湾流中秋節の過ごし方についてご紹介しよう。


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中秋節は旧暦の8月15日。2020年だとは10月1日、2021年だと9月21日になる。
今日のポイント
✔お参りに大忙しの日
✔中秋節には何を食べるの?
✔鶴橋もびっくり!中秋節の焼肉事情
中秋節のお祈り事情
中秋節当日は朝から大忙しだ。何せたくさんの神様にお祈りしなければならない。先ずは中秋節のお祈り事情について。

神様

伝統的な台湾の家庭には仏壇や神棚というにはかなり大きい神明廳がおかれている

引用元:ウィキペディア
台湾は多神教であるので祀られている神様も家によって違うのだが天公といわれる神様が多い
参考 天公とは?
道教の最高神。本名は高上玉皇大帝で、あの西遊記にも登場する。
先ずは綺麗に掃除して線香を上げる。これは午前中に行なわなければならない。お供え物は三牲と呼ばれる豚肉や魚、卵の他に文旦などの果物(後述)、お茶か酒、ごはん、月餅等だ。そして忘れて行けないのはお線香と金紙。金紙は天国で使えるように燃やさなければならない。


先祖
神様にお祈りしたら次は先祖供養だ。先ほど神様に捧げたテーブルをそのまま持ってご先祖様の所へ移動する。それとご先祖様が好きだったものもお供えしよう。これも午前中に行なう。
地基主
午前中に神様とご先祖にお祈りしたら、午後は地基主にお祈りする。お供え物はご飯やおかず、お茶か酒、果物に月餅、そして金紙。ここで一つ注意点、地基主は背が低い(100㎝から120㎝)なので低いテーブルを用意しなければならない。
参考 地基主とは?
家の守り神。中国にはない台湾の民間信仰。以前の記事で紹介した平埔族が信仰していた神様との説あり。
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土地公
神様、ご先祖、地基主のお祈り時間は決まっているが、土地公に関しては決まっていない。午前でも午後でも時間が空いたら土地公にお参りする。捧げるのは、三牲と金紙。
参考 土地公とは?
福徳正神とも呼ばれている土地を守る神様、日本で言う氏神様にあたる。神様の中では地位がやや低めなだけに、より人々に近い距離間で親しまれている。特に商売人に愛されてる神様で、旧暦の2日と16日に商売繁盛を願ってお参りされている。
月
最後は月、月餅、果物(奇数)そしてお茶を三杯供える。丸い月は円満を意味するので、家族で月にお祈りする。

中秋節には何を食べる?
月餅
月に見立てた丸くて甘いお菓子。中には鹹蛋というアヒルの卵の塩漬けを入れた塩辛い月餅もある。


文旦
文旦(ブンタン)は中国語では柚子(yòuzi)は遊子(yóuzi)と発音が似ていて、「遊子(里を離れて他郷にある人)も家に戻ってきて食卓を囲む」という意味が込められている。また「佑子」とも発音が似ており、とにかく縁起が良いフルーツとされている。文旦には写真のような赤い実のものもある。

アヒル
台湾南部の美濃地区に住む客家人は、中秋節にアヒルを食べる。これはちょうどその時期のアヒルに脂がのってて美味しいからだそうで、宗教的な理由はない。
中秋節と言えば焼肉
地球温暖化もなんのその。中秋節の夜も煙は出続ける。なぜなら皆、家の前や店の前で焼肉をするからだ。僕も今まで何度か焼肉をハシゴさせられた事がある。色々なところからお声がかかった結果だ。それだけならまだしも、何の心遣いか時期をずらして焼肉をする友達もいて、結果的に一週間ぐらい毎日焼肉だった年もあった。流石に暫く肉は見たくなくなった。

中秋節に焼肉、その由来は古代中国の偉大な詩人である…なわけはなく、諸説あるのだが有力な説として台湾で有名なタレのメーカー2社が競って出したテレビCMにあるという。ここで噂のCMをご紹介しよう。
1社目は萬家香というメーカーのCMで1986年のもの。キャッチコピーである「一家烤肉萬家香」(一家で焼肉、萬家香)は今でも有名らしい。
萬家香に遅れる事3年、金蘭醬油が1989年に出したテレビCMが以下のものだ。クセになる音楽が特徴。
まとめ
現代化が進み、お祈りに関して今はそこまで厳格に行っている家庭も減ってきているが、それに代わり新たに台頭してきた“新興宗教”が焼肉だ。確かに外で焼肉を囲む事により食事と月見を同時に出来るので効率も良い。一方で変わらないのは家族の絆。中秋節は家の外に出て家族団らんで焼肉をするのが新たな風習になっている。
今日のまとめ
お祈りは順番と時間が決まっている。
月餅には塩辛い味のものもある
文旦は縁起が良いフルーツ
焼肉は今や国民行事